山の音
鎌倉に住む一家の、嫁(原節子)と義父(山村聰)の間に芽生えた恋愛感情を包み隠しもせずに(と書いちゃうと言いすぎか?)描いたエロースな逸品。立派な人なんか一人も出てこないし、夫(上原謙)に至ってはそうとうひどいヤツだってことになるんだろうけど、でも、そういうもろもろを込みで、“そこにいる人々”ってことを描けてると思う。そんな中で、従順なできた嫁かと思っていた原節子が、後半、自分を出していくにしたがって、ドラマは動いていく。
この映画、原節子がキレイって意味ではナンバーワンかも。停電のシーンとか、ハナヂのシーンとか、義父の前で急に泣くシーンとか、クラッとしましたよ。あと冒頭、原節子が自転車で帰ってくる道はどっかで見た覚えがしてしょうがない。『めし』に似たような画があったのかしら?
室内への光の入り方とか、カメラが移動を始めるタイミング、スピードなんかも生理にうったえる気持ちよさ。成瀬巳喜男は気が合う感じの監督。
ちなみに川端康成の原作は読んだことない。これから読んでみますよ。
蛇足。義父の秘書的な役で出ている杉葉子の顔がどうしても苦手です。ついでに言うと久我美子も苦手。
<データ>
1954年/東宝
監督:成瀬巳喜男/原作:川端康成/脚本:水木洋子/撮影:玉井正夫/美術:中古智/音楽:斎藤一郎
出演:原節子、上原謙、山村聰、長岡輝子、杉葉子、丹阿弥谷津子、中北千枝子ほか