名作復活

1985年の刊行時からちゃんと名作だと評価されていたのに*1、なぜか最近入手不可能になっていた宮脇俊三の『殺意の風景』が光文社文庫で復活。

文庫でわずか250ページぐらいの中に18本もの短編を収録。つまりはミステリーのショートショート? でも読んだ感触はけっこうずっしりとくる。いわゆる「書かずに書く」という技術がズバ抜けてるんだな。

でも、これだけ品切れの期間が長いと、ミステリーファンでもこの本知らないなんて人、多いかもしれない。なにしろ宮脇俊三ってミステリーの著作がこれ一冊しかないらしいからね。なんてもったいない。

日本全国を舞台にして、たった15ページで人の心に殺意が芽生えた瞬間の風景をざくりざくりと、しかも余韻豊かに切り取っていくこの手腕。ホントに多くの人に堪能してほしいと思う。1編が平均15ページしかないのに、ミステリーとしても濃厚だし、逆に短いゆえにホラー的な味わいもある。このコクの深さには、ほかではなかなか出会えないと思うんだけど、どうなのかしら?

あ、著者のプロフィールについて全然触れられなかったな。鉄道好きの方などはぜひキーワードも見てみて(というか、鉄道好きなら宮脇俊三は知ってるか)。


殺意の風景 (光文社文庫)

*1:一応「泉鏡花文学賞」受賞作である